
セールスイネーブルメントとは?営業組織を強化する取り組み事例・進め方を紹介
企業における営業チームの組織開発ノウハウとして、昨今急速に注目を浴びている取り組みであるセールスイネーブルメント。営業組織全体を強化し、持続的に結果を出すことができる強靭なチーム作りのために欠かすことの出来ない戦略的な人材育成プロセスです。この記事では、データを活用して業務課題を解決に導く組織論であるセールスイネーブルメントについて、細かく解説します。
目次[非表示]
- 1.セールスイネーブルメントとは?
- 1.1.セールスイネーブルメントの歴史
- 1.2.セールスイネーブルメントの市場規模
- 1.3.従来の研修との違い
- 1.4.セールスイネーブルメントの理解を深める書籍
- 2.セールスイネーブルメントが注目される背景
- 2.1.営業活動が属人化している
- 2.2.マーケティング活動の自動化が進んでいる
- 2.3.顧客の需要が複雑化している
- 3.セールスイネーブルメントのメリット・効果
- 3.1.営業力の向上・属人化の防止
- 3.2.営業活動の数値化・可視化
- 3.3.社員育成の効率化
- 4.セールスイネーブルメントの取り組み例
- 4.1.営業担当者を対象にした研修
- 4.2.社員教育プランの開発・準備
- 4.3.SFA/CRMなどのツールとの連携
- 5.セールスイネーブルメントの進め方
- 5.1.セールスイネーブルメント専門部署を設置する
- 5.2.目的を明確にし、優先度をつけていく
- 5.3.ツールの導入やコンサルタントの導入を検討する
- 5.4.実施・目標や施策の見直しをする
- 6.セールスイネーブルメントはeラーニングの活用でより効果的に
- 6.1.収集したノウハウを効率的に活用できる
- 6.2.社員情報管理も容易に
- 6.3.マイクロラーニングにも対応できる
- 7.eラーニングなら「etudes」にお任せください
セールスイネーブルメントとは?
セールスイネーブルメントとは、営業組織が継続的に結果を出し続けることが出来るために必要な人材育成のプロセスなどを、ITツールやデータを積極的に活用しながら行うことのことです。しっかりと成果を出すことが出来る人材を輩出するために必要な、再現性の高いプログラムの構築を目指します。
営業がしっかりと成果を出し、企業の売上を向上させていくためには、バックグラウンドとなる強靭な組織力が欠かせません。組織が整ってこそ初めて、部下のマネジメントが円滑に進むとともに、人材育成がスムーズに行えるような環境が完成します。大きな戦力となる営業メンバーを育成していくためにも、セールスイネーブルメントは近年急速に注目を浴びている取り組みの一つです。
セールスイネーブルメントの歴史
近年急速に注目を集めているセールスイネーブルメントですが、実はその歴史は20年以上とかなり古いです。初めてセールスイネーブルメントの概念が持ち出されたのは、1999年までさかのぼります。当時ビール販売会社であるMiller Brewing Companyを経営していたブランドマネージャーのJohn Aielloと、電気通信コンサルタントとして働いていたDrew Larsenが、販売管理に戦略的アプローチを導入したことがセールスイネーブルメントの始まりです。
1990年代から2000年代にかけてセールスイネーブルメントの考え方は脈々と受け継がれ、2013年にはSales Enablement Societyというセールスイネーブルメントの実務家たちによる非営利の団体が発足しました。その後、一般企業にもセールスイネーブルメントの考え方が浸透していき、現在に至ります。
セールスイネーブルメントの市場規模
セールスイネーブルメントの市場規模は、近年大幅な伸びを記録しています。2019年にITR社が発表した調査によると、2017年度のセールスイネーブルメント市場の売上高は14億円を記録しています。これは前年度に比べて6.1%増加した計算です。
2018年度には10.7%増加し、16億円に到達するとの予測も発表されています。WEBマーケティングの普及などによりセールスイネーブルメントの考え方が注目を浴びる中、今後もますますセールスイネーブルメントの市場規模は大きくなっていくと言えるでしょう。
参考:ITR「ITR Market View :SFA / 統合型マーケティング支援市場2019」
従来の研修との違い
セールスイネーブルメントとよく似た概念として、これまでも一般的に行われてきた社員研修が挙げられます。これら二つの言葉には、一体どのような違いがあるのでしょうか。
実は、セールスイネーブルメントと一般的な研修の大きな違いは、その対象にあります。従来型の研修は主に新入社員をターゲットとして、業務に必要なノウハウや知識を効率的に提供することを目的としていました。それに対してセールスイネーブルメントは、継続的に結果を出すことが出来るための仕組みづくりを、営業組織を中心に行っていきます。そのため、新入社員のみならず営業部署に所属する社員のほぼ全員が対象となるのが特徴です。
セールスイネーブルメントの理解を深める書籍
セールスイネーブルメントの概念を学ぶことが出来るおすすめの書籍として、山下貴宏『セールス・イネーブルメント 世界最先端の営業組織の作り方』があります。これはセールスイネーブルメントに関連する書籍の中でも最も有名な本です。アマゾンやツイッター、セールスフォースなどが実践しているセールスイネーブルメントの知識を体系的に確認することが出来ます。
また、バイロン・マシューズ『営業力を強化する世界最新のプラットフォーム セールス・イネーブルメント』もおすすめです。こちらの本は、米国の法人営業などの成功事例を豊富に含んだ実例解説がされています。
セールスイネーブルメントが注目される背景
セールスイネーブルメントの概念自体は1999年に提案されたもので、決して歴史が浅いものではありません。それではなぜ、現在になって営業力を強化するためのノウハウであるセールスイネーブルメントが急速に注目を浴びているのでしょうか。セールスイネーブルメントが注目される理由について、いくつかご紹介します。
営業活動が属人化している
セールスイネーブルメントが最近になって注目を浴びている要因として、営業活動が属人化していることが挙げられます。営業において「属人化」といえば、一般的には組織の能力が個々人の能力に強く依存してしまっている状態のことを指します。一部の優秀なトップ社員が成果を出せばチーム全体としての成果は上がりますが、メンバーの離脱や移籍に弱いという欠点があるため、属人化は出来るだけ防ぐ必要があります。
セールスイネーブルメントは、営業組織の作り方に関するノウハウを学ぶことで、組織力そのものを向上させようという考え方です。この考え方に基づいて構成された組織は個人の能力に依存しない安定した実績を出すことが出来るため、属人化の解消に効果的とされています。
マーケティング活動の自動化が進んでいる
セールスイネーブルメントの特徴として、マーケティングデータを活用しやすくなるということが挙げられます。最近ではマーケティング活動の一環として「ビッグデータ」と呼ばれる膨大なデータが収集されることも少なくありません。
マーケティング領域においても業務の自動化が進んでいるため、複雑なデータを活用するために強い組織力を備えた営業組織が必要とされています。セールスイネーブルメントによって営業組織をより強靭にすることで、自動化されたマーケティングとシナジーを生み出しながら成果を出すことが出来るのです。
顧客の需要が複雑化している
セールスイネーブルメントが注目されているもう一つの背景として、顧客の需要が複雑化していることが挙げられます。昨今ではSNSやインターネットも当たり前のように普及しているため、個人の需要は複雑です。さらに、グローバル化によって日々様々な情報が行き交う現代では、個人の価値観もますます多様化してきています。
そのため、従来のような画一的な営業施策では、成果を出すことが難しくなってきているのが現状です。セールスイネーブルメントの考え方を活用した柔軟な営業組織を構築することで、多様化する価値観にも適応することが出来る強力な営業組織を作り上げることが出来ます。
セールスイネーブルメントのメリット・効果
セールスイネーブルメントのメリットや効果は以下の通りです。
- 営業力の向上・属人化の防止
- 営業活動の数値化・可視化
- 社員育成の効率化
それぞれの項目を詳しく解説します。
営業力の向上・属人化の防止
セールスイネーブルメントの持つ最大のメリットは、営業力の組織力を向上させることによって、営業力そのものを強化するという点です。特に新人営業の育成に力を入れることで、次世代以降にも受け継ぐことの出来る強力な営業組織を構築することが出来ます。
また、営業部署では往々にして、一部の優秀な社員が結果を出し続けるという「営業力の属人化」が発生します。セールスイネーブルメントは、なるべく営業能力の差を縮め、優秀な社員を育成していくことに力を注ぐのが特徴です。そのため、営業力の属人化が解消出来るというメリットもあります。
営業活動の数値化・可視化
営業活動を行う上で、「誰がどの程度の売上を出したか」「最も成果が出ている商品は何なのか」といった「数値」は非常に重要な要素となってきます。セールスイネーブルメントでは、データドリブンな施策を積極的に行うことが特徴です。データに基づいたロジカルな判断を行うことで、誤りのない営業判断を行うことが出来ます。
また、営業活動のデータを可視化することは、営業メンバーのモチベーションの向上、ロイヤリティの改善にも繋がります。データを積極的に活用するセールスイネーブルメントの姿勢は、データがますます重要視されている昨今の風潮とも相性が良いと言えるでしょう。
社員育成の効率化
従来のOJT研修を行うだけでは、社員間の能力差を縮めることまでは出来ません。どうしても「エース社員に頼ってしまう」「一部の優秀なメンバーのみが数字を上げている」といった状況が発生してしまいます。
セールスイネーブルメントでは、最新のベストプラクティスに基づいた育成パターンを組織横断的に展開するのが特徴です。また、営業の業務をこなす中で得られたノウハウを組織全体へ積極的に共有します。このため、営業メンバー間での能力の偏りが発生しづらく、営業部署の実力の底上げを実現することが可能です。人材育成が効率化するという点も、セールスイネーブルメントのメリットと言えます。
セールスイネーブルメントの取り組み例
セールスイネーブルメントとは、営業力の人材育成に注力することで組織力を強化するための施策全体のことを指しますが、これだけではなかなか具体的なイメージが沸かないかも知れません。ここでは、セールスイネーブルメントの考え方を実際の業務に応用するための具体的な施策について、研修や教育プランなどの観点から3つ紹介します。
営業担当者を対象にした研修
セールスイネーブルメントを推し進めるための方策として、最もポピュラーなのが営業担当者を対象にした研修の実施です。営業の組織力を向上させるためには、営業のために必要なノウハウを部署内で共有する必要があります。
営業部署の社員それぞれに営業のためのノウハウを提供し、互いに学び合う文化を醸成することで、より強力な組織開発を行うことが可能です。営業の社員全体を対象とした研修を実施することは、セールスイネーブルメントを進める上で役立つ方法と言えます。
社員教育プランの開発・準備
社員それぞれに適した教育プランの開発や準備も、セールスイネーブルメントを実践する上でよく取られる方針です。セールスイネーブルメントでは、営業組織に蓄積されている営業ノウハウの効率的な伝達に力点が置かれています。
社員の営業力を底上げするために必要な教育プランを提供し、先輩社員の持つ優れたノウハウを次世代へ受け継いでいくことが重要です。情報共有を積極的に行うことで、持続性の高い営業組織を開発することが出来るでしょう。
SFA/CRMなどのツールとの連携
営業の自動化を進めるツールであるSFAや、顧客との関係を適切に管理するシステムであるCRMなどを活用することも、セールスイネーブルメントを進める上で重要な観点です。セールスイネーブルメントでは、データが重要視されています。
マーケティングによって社内に蓄積された膨大な顧客データを活用するためには、SFAやCRMといったIT技術を積極的に活用することが極めて重要です。これらのツールをセールスイネーブルメントの取り組みと上手く組み合わせることで、より効果的なセールスイネーブルメントの実施に繋がります。
セールスイネーブルメントの進め方
セールスイネーブルメントという概念は理解出来るが、具体的にどのようにしてセールスイネーブルメントを実践すればよいかわからない、という方もいらっしゃるかもしれません。セールスイネーブルメントを実践する上では、正しいステップを順番に踏んでいくことが必要不可欠です。具体的なセールスイネーブルメントの進め方について解説します。
セールスイネーブルメント専門部署を設置する
セールスイネーブルメントを推し進めるために、セールスイネーブルメントを専門とする部署を設置することは非常に有効です。セールスイネーブルメントを正しく行うためには、営業部署の事情をよく理解しているとともに、マネジメント能力にも長けた人材が必要となってきます。
そのため、営業メンバーの蓄積してきた営業活動のデータを蓄積し、そこから課題を改善することを専門とする部署を設置するのが得策です。メンバーの能力を適切に評価することの出来る人材を確保するのも良いでしょう。
目的を明確にし、優先度をつけていく
「セールスイネーブルメントを進めよう」とは言っても、目的意識がなければ漠然としたアプローチになってしまい、結果を出すことが難しくなってしまいます。そのため、セールスイネーブルメントを実践する前に今一度、セールスイネーブルメントを通して実現したい目標や、解決したい課題を洗い出しておきましょう。
さらに、目的を明確化した上で、そのために取り組むべき課題に優先度をつけていくことも必要です。タスクをしっかりと整理した上で、優先度合いの高いものから順に取り組むことで、より効率的にセールスイネーブルメントを進めることが出来ます。
ツールの導入やコンサルタントの導入を検討する
セールスイネーブルメントでは、営業組織の収集した膨大なデータを扱う必要があります。IT化の進展に伴って収集されるデータがますます増えてきている昨今、大量の顧客データを適切に扱うためには専門のツールが必要です。
最近では、セールスイネーブルメントを行うことのできるツールもいくつか展開されています。また、セールスイネーブルメントに長けたコンサルタントを依頼するというのも一つの手です。ツールやコンサルタントを適切に活用することで、より効果的なセールスイネーブルメントの実施を目指しましょう。
実施・目標や施策の見直しをする
セールスイネーブルメントを行う上で重要なポイントの一つに、「PDCAサイクルを回す」ということがあります。営業組織の強化のために実施した施策を実施したままにするのではなく、施策の結果のフィードバックを受け取った上で、それを次の実施、目標設定に反映することが重要です。営業組織から収集したフィードバックを常に注意しながら、必要に応じて目標、施策の修正を行っていくようにしましょう。
セールスイネーブルメントはeラーニングの活用でより効果的に
セールスイネーブルメントを行う上では、社員それぞれに適した営業ノウハウの伝授を行っていくことが欠かせません。営業メンバーひとりひとりに対して最適なプログラムを提供することが求められるため、従来型の研修だけではできない部分も多くなっています。そこで注目を浴びているのが、eラーニングを活用したセールスイネーブルメントの推進です。セールスイネーブルメントにeラーニングを活用するメリットを紹介します。
収集したノウハウを効率的に活用できる
セールスイネーブルメントを行う上では、先輩社員が持っている営業スキルやノウハウを次世代の社員へ受け継いでいくことが極めて重要です。しかし従来型の研修の実施は、研修参加者のコストがかさむだけでなく、研修管理者の負荷も増加してしまうというデメリットがあります。
しかし、eラーニングであれば、営業部署が収集したノウハウを効果的に次世代の社員へと受け継いでいくことが可能です。研修に参加する社員も、手軽にスキマ時間で学習を進めることが出来るため、業務を無理に中断する必要もありません。セールスイネーブルメントにeラーニングを活用することは、効率面で大きなメリットがあります。
社員情報管理も容易に
eラーニングの学習状況を管理するシステムの中には、社員の情報を一元的に管理することが出来るものも多いです。セールスイネーブルメントは、営業の組織力向上を目指して行われることがほとんどであるため、複雑な組織構造を一括で管理することのできるeラーニングのシステムと相性が良いとされています。
特に、頻繁な組織変更や複雑な構造を持つことが多い日本企業の場合にはeラーニングシステムによる社員情報の管理が適しています。社員の学習状況などのデータを即座に把握できるという面でも、eラーニングはセールスイネーブルメントを実施する上で有効です。
マイクロラーニングにも対応できる
最近では、eラーニングを実施する側の負荷軽減、研修参加者の学習効率の向上などを目的としたマイクロラーニングが注目を浴びています。これは、一つの学習内容を細かく分割した上で社員に必要な分だけ配信を行うというメソッドです。
セールスイネーブルメントを行うためには営業ノウハウの伝達が欠かせませんが、マイクロラーニングを行うことでよりノウハウの伝達を効率的に進めることが出来ます。eラーニングはそのようなニーズにも対応した構造となっており、マイクロラーニングにも対応しているため、eラーニングによってセールスイネーブルメントを効率化させることが可能です。
eラーニングなら「etudes」にお任せください
昨今、営業力の組織開発を目的として急速に注目を浴びているノウハウであるセールスイネーブルメント。1999年から活用されている概念ですが、IT化の進展によりデータがますます重要性を帯びる現在においては検討する価値の高い施策であり、eラーニングとも相性が良いのが特徴です。
eラーニングを効果的に実施するためのおすすめのツールとして、「etudes」が挙げられます。etudesでは、マイクロラーニングにも対応した様々なコンテンツの発信が可能です。強靭な営業組織を構築するためにも、ぜひetudesの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
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