
ナレッジマネジメントの成功事例とよくある失敗事例を解説
ナレッジマネジメントを導入したものの、「重要性の理解が得られなかった」「運用ルールが機能していなかった」などの理由により導入に失敗する企業が多く見られます。
一方で、ナレッジマネジメントの導入に成功した有名な企業も数多くあります。
自社でのナレッジマネジメント導入を成功させるには、この失敗・成功事例をきちんと知っておくことが大切です。
この記事では、ナレッジマネジメントの成功・失敗事例を詳しく解説していきます。
目次[非表示]
- 1.ナレッジマネジメントの成功・失敗事例とは?
- 2.ナレッジマネジメントとは
- 3.ナレッジマネジメント導入の効果
- 4.実際の企業の成功事例を紹介
- 4.1.富士フイルムビジネスイノベーション
- 4.2.NTT東日本法人営業本部
- 4.3.キーエンス
- 4.4.富士ゼロックス
- 4.5.チェンフー
- 4.6.磨き屋シンジケート
- 5.よくある失敗事例から学ぶ導入のポイント
- 6.ナレッジマネジメントツールが使いこなせない
- 7.ナレッジマネジメントの必要性が伝わらず失敗
- 8.運用のルールが設定されておらず失敗
- 9.自社に最適なナレッジマネジメント方法を選ぼう
- 10.eラーニングによるナレッジマネジメントとは
- 10.1.ノウハウやナレッジをeラーニング教材化
- 10.2.教材の蓄積・配信
- 10.3.LMSによる学習管理も
- 11.eラーニングなら「etudes(エチュード)」
- 12.まとめ
ナレッジマネジメントの成功・失敗事例とは?
ナレッジマネジメントに限らず、さまざまなビジネス施策には成功例と失敗例があります。
成功例だけを見て真似をすれば必ずうまくいくというわけでもありません。
意外にも、失敗例から学ぶことは多いと言えるでしょう。
まずはナレッジマネジメントの基本情報をお伝えした上で、実際の企業によるナレッジマネジメントの成功例と、よくある失敗例をそれぞれご紹介いたします。
また、ナレッジマネジメントの導入成功につながるツールについても、解説いたします。
ナレッジマネジメントとは
仕事をするにあたって、企業やその社員は知識や経験、ノウハウなどを積んでいきます。仕事を続けることにより得た知識などのことを暗黙知と呼びますが、この暗黙知を企業全体で共有をして、経営に活かしていく手法のことをナレッジマネジメントと呼びます。
つまり、企業やその社員が持っている有益な情報を、企業がまとめて管理をし、有効的に活用するということです。
なお、ナレッジ(knowledge)とは、知識や情報、知見などのことを指します。ビジネスでは、文章から得られた知識などのことだけではなく、体験をすることで得られた知識や経験なども含め、ナレッジと呼んでいます。
また、暗黙知の対義語として形式知があります。形式知は、誰もが言語化、資料化することができるものを指します。暗黙知を形式知に変えることが、ナレッジマネジメントの目的の一つです。
ナレッジマネジメント導入の効果
ナレッジマネジメントを導入することにより、さまざまな効果が期待できます。
- 人材教育や育成の効率化
- 人材教育や育成は、育成する人の能力や、育成システムにより大きく差がつきます。この差を無くし、より効率的な人材教育をおこなうことができます。
- サステナビリティの実現
- 暗黙知を持った社員が退職してしまうと、その退職者によって防がれていたクレームや事故などが再度起きてしまいます。このようなことにならないよう、社員の暗黙知を形式知に変えることにより、企業として持続可能となりサステナビリティが実現します。
- 新たなナレッジの取得
- 知識が集まることにより、新たな知識が創造されていきます。ナレッジマネジメントには過去の知識をまとめることだけではなく、これからの知識とノウハウを作り出すことも含まれるのです。
- 業務改善の効率化
- ナレッジマネジメントができていないと、特定部署のみに知識が蓄積される場合があります。これを共有化することにより各部署での業務改善につながります。
実際の企業の成功事例を紹介
業務効率を上げたり、さらなる売上を出すためにナレッジマネジメントを導入し、成功した企業は数多く存在します。
ここからは、ナレッジマネジメントを導入し成功を収めた企業を数社ピックアップし、成功事例などを紹介します。
富士フイルムビジネスイノベーション
最初に紹介させていただくのは、富士フイルムビジネスイノベーションの「何でも相談センター」です。
富士フイルムビジネスイノベーションでは、「何でも相談センター」を企業内に設置し、社員の仕事上の相談を受け付け、相談があった内容は社内をたらい回しにせず、必ずダイレクトに回答をするという取り組みをしています。
この取り組みにより、社員があたる仕事上の壁をどのように乗り越えたらいいのか、またそれをどのように解決したら良いのかという知識が蓄積されていきます。こうして、業務時間の大幅短縮、業務の質の向上などの成果が上がっています。
NTT東日本法人営業本部
NTT東日本法人営業部では、オフラインとオンラインともにナレッジマネジメントを導入、運用し業務改善に成功しました。
オフラインとオンラインの施策をそれぞれ見ていきましょう。
- オフラインでのナレッジマネジメント運用
「ベースゾーン」「クリエイティブゾーン」「コンセントレーションゾーン」「リフレッシュゾーン」などをオフィスに導入し、暗黙知から形式知へとナレッジ共有しやすい環境を構築しました。その結果、普段は交流のない部署同士のコミュニケーション増加を促すことに成功しました。
- オンラインでのナレッジマネジメント運用
営業本部に所属する全員が個人のホームページを持ち、プロジェクトの記録などの暗黙知を形式知へ変換し、他の社員へナレッジ共有するシステムを導入しました。システムの導入により、個々の培った知識や経験を他の社員と共有することに成功しました。
キーエンス
キーエンスでは、ナレッジマネジメントを実施しても成功しづらいと言われている営業部門において、インセンティブ制度を導入することによって成功しました。
営業は組織内での競争があるため、営業同士が知識やノウハウを伝えるという意識が希薄です。そのため、上司よりナレッジマネジメントを導入する、という一言では、ナレッジマネジメントは浸透しません。
そこで、人事評価と共にナレッジマネジメントのインセンティブ制度を確立し、人事評価5、ナレッジ共有5という割合での評価にし、ナレッジマネジメントの導入に成功したのです。
富士ゼロックス
ナレッジマネジメントの導入率は日本一とも言われている富士ゼロックス。「全員設計」というコンセプトのナレッジマネジメントを取り入れることによって業務効率改善に成功しました。
富士ゼロックスでは、商品の最終設計段階になると、設計調整が入りたびたび納期が遅れるという事態が起きていました。これは、商品の段階ごとの設計者の意見を取り入れていくようにしていたため、最終設計者は最終段階でしか設計変更を申し入れられなかったのが原因でした。
このような事態を解消すべく設計者が全員、初期段階から参加し打ち合わせ内容を記録する独自のシステムを開発し、運用を開始しました。その結果、設計段階ごとの連結化に成功し、業務効率の改善につながっていきました。
チェンフー
チェンフーはシンガポールに本社を置く、観賞魚を輸出する企業です。チェンフーは養殖事業失敗を契機として、ナレッジマネジメントの導入検討を開始しました。
当時、チェンフーでは社員の移動が多く、社内システムにアクセスすることが難しいことがありました。
その結果、暗黙知が増えてしまったため、これを改善すべく社員のナレッジを共有するシステムを導入しました。これによって社員のスキルや知識だけでなく、顧客へのサービスレベルや事業生産性、売上や利益率も向上することに成功しました。
具体的には、魚の検疫と袋詰めのマニュアルが完成したことにより、商品到達時に魚がどれだけ死亡するのかという、死亡率の低減などに効果をもたらしました。
磨き屋シンジケート
磨き屋シンジケートとは、金属洋食器加工で有名な新潟県燕市にある、燕商工会議所が主催する金属加工の共同受注組織です。
磨き屋シンジケートは、格安の海外金属洋食器におされ、海外洋食器の下請け金属加工業となることに危機感を覚えていました。そのため、ナレッジマネジメントを導入し、地位改善を目指しました。
受注面では、顧客窓口、製造管理、品質管理などを担当する企業があり、別々の業務を担当していました。この別々の業務の連携を強化することにより、受注から納品までのプロセスマニュアルが完成し、受注から納品までの時間コスト削減などに成功します。
また、技術面では、それぞれの職人の技を共有化することにより、製品の質の向上に成功。その他にも、職人同士の交流が活発化し、生産モチベーションの向上、職人それぞれの技術の高いレベルでの標準化なども達成しました。
よくある失敗事例から学ぶ導入のポイント
ここまでは、ナレッジマネジメントの導入に成功した事例を紹介してきました。
しかし、成功事例があるのであれば、失敗事例も数多く存在します。失敗事例に関しては、失敗する傾向が似通っています。導入前に知っておくことで、失敗のリスクを回避することができるでしょう。
ここからは、ナレッジマネジメントを導入しようとしたが、失敗したというありがちな失敗事例を紹介します。
ナレッジマネジメントツールが使いこなせない
ナレッジマネジメント導入の失敗事例の1つ目は、ナレッジマネジメントツールが使いこなせないことです。
ナレッジマネジメントツールを使いこなせないのには、いくつか理由が考えられます。
- 企業の規模に合っていないナレッジマネジメントツールを導入してしまった
- ツールのマニュアルがわかりづらく社員が理解できなかった
- 社員にとって入力作業が面倒だった
といったものがよくある理由として挙げられます。
ナレッジマネジメントツールは適切な規模、内容で運用を開始することが大切です。
それでは、ナレッジマネジメントツールが使いこなせないという失敗事例はどのように防げばよいのでしょうか。
ポイント・まずは一部署から徐々に規模を拡大
ナレッジマネジメントツールが使いこなせない、という失敗を防ぐためには、まず、一部の部署から徐々に規模を拡大することが大切です。
いきなり全体にツール使用を命じてしまうと、反感が表立ちやすいですが、ツール導入する必要性が高い部署から運用を開始していくことにより、ナレッジマネジメントツールの必要性を社内に少しずつ広めていくのが良いでしょう。
ナレッジマネジメントの必要性が伝わらず失敗
ナレッジマネジメント導入の失敗事例の2つ目は、ナレッジマネジメントの必要性が伝わらず失敗することです。
このケースにもさまざまな理由が考えられます。
必要性がうまく伝わらないのは、ナレッジマネジメントのシステムとツールの使い方だけが説明され、共有のための作業を社員に強要してしまうというケースが多いです。
必要性が感じられないと「社内のライバルに知識・ノウハウを知られたくない」「通常業務が忙しくナレッジマネジメントに対応できない」などの態度を示してくるときがあります。
このような場合は、ナレッジマネジメントの導入前に社員に対して、ナレッジマネジメントの必要性をどれだけ伝え、導入の失敗を防いでいきます。
ポイント・導入前に全従業員に理解してもらう
ナレッジマネジメントを導入するときには、あらかじめ全社員に対してナレッジマネジメントの必要性を説明し、導入に同意できるような下地作りからしておく必要があります。
企業にとって必要だから、というような一言で導入してはいけません。
普段の業務で時間効率が悪いことが改善する、他者だけではなく自分の売上も上がるなど、社員の立場で提案をしていくことが大切です。
運用のルールが設定されておらず失敗
ナレッジマネジメント導入の失敗事例の3つ目は、運用ルールが設定されておらず失敗することです。
ナレッジマネジメントの導入に関して、人の問題を乗り越えても、ナレッジマネジメントツール自体の問題も解決しなければなりません。
どういうことかというと、社員がナレッジマネジメントに同調し知識やノウハウをデータ化しても、集めたデータを一元化するシステムやマニュアルを用意しておく必要があるということです。
このような状態に陥ると未整理データばかりが増え、せっかくのデータが使えず暗黙知を形式知に変換することができません。このような運用のルールが設定されておらず失敗することを防ぐには、あらかじめ具体的なルールを設定してから、ツールを導入することが重要です。
ポイント・具体的なルールを設けてから導入
運用のルールが設定されていないせいで失敗することを防ぐには、当然ながら、できるだけ実用的かつ具体的な運用ルールを設けておくことが一番です。
または、データ入力・蓄積の形式が自由なナレッジマネジメントツールを導入するという方法も効果的でしょう。
運用ルールを事前に定めておけば、データを一元化しやすくなります。導入後のトラブルにも対応しやすくなるでしょう。
自社に最適なナレッジマネジメント方法を選ぼう
ナレッジマネジメントには、さまざまな方法があります。しかし、ナレッジマネジメントに対してどのような効果を期待するのか、企業規模はどのくらいなのか、運用にあたり簡易に使用ができるツールが良いのかなど、どのようなナレッジマネジメント方法を選ぶのかを見極める必要があります。
ナレッジマネジメント導入の成功事例や失敗事例から、どのような方法・ツールを取り入れるか、しっかり計画をしてからナレッジマネジメントを導入していきましょう。
eラーニングによるナレッジマネジメントとは
eラーニングは、ナレッジマネジメントツールとしても活用できます。
eラーニングとは、パソコンやタブレット、スマートフォンなどを利用し、オンラインで学習するシステムです。
なぜeラーニングがナレッジマネジメントツールとして有用なのでしょうか。
それは、蓄積されたナレッジマネジメントデータが、通常のデータベースのものより、eラーニング教材としてのデータの方が視覚的にわかりやすく、直感的に操作できるメリットがあるからです。
ノウハウやナレッジをeラーニング教材化
前述した通り、知識やノウハウなどのナレッジをeラーニング化し、社員に向けた教材として使用することができます。このことにより、大規模な集合研修を実施しなくても、ナレッジマネジメントを行うことができ、時間・コストの削減につながります。
また、社員は自由に研修を受けることができるため、効率よく蓄積されたデータによって学習していくことができます。
eラーニング教材は購入すべきか、自社開発すべきか詳しく知りたい方は『eラーニングの教材は購入すべき?開発すべき?良い教材のポイントも』をご覧ください。それぞれのメリット・デメリットを紹介しています。
教材の蓄積・配信
ナレッジマネジメントツールとしてeラーニングシステムを利用する場合、eラーニング教材を作成する必要があります。
初めから受講者に教えることを目的としてナレッジを収集すれば、よりわかりやすく共有しやすい内容にまとまるでしょう。
eラーニングの教材を作成したことがないという企業でも、eラーニングシステムのベンダーからサポートを受けることで高クオリティな教材作成が可能となります。
こうして作られた自社ノウハウのeラーニング教材はeラーニングシステム内に蓄積され、必要に応じて受講者に配信をすることができます。
LMSによる学習管理も
eラーニングでのナレッジ共有を実施する際に、LMSによる学習管理を行うことで、eラーニングでの学びをより一層効果的にすることができます。
LMSとは、eラーニング受講者と教材の管理や学習進捗の管理などをおこなう学習管理ツールです。LMSにより、どの受講者にどの講座を割り当てるかや、どの受講者がどれくらい講座を進めているかといった学習管理を行うことが可能です。
eラーニングの進捗度合いを管理し、個々に合った指示を出すことにより学習を手助けすることができます。
eラーニングなら「etudes(エチュード)」
ナレッジマネジメントのためにeラーニングシステムを導入する場合は、「etudes(エチュード)」がおすすめです。
前述したとおり、ナレッジマネジメントを成功させるには、eラーニングシステムの内容を精査することが不可欠です。
etudesは、運営のアルー株式会社が20年余りの人材育成ノウハウを結集して開発した、日本国産のクラウド型eラーニングシステムです。
etudesならeラーニング教材の作成サポートから、教材配信、学習効果測定、さらにはLMS機能も搭載されています。
全ての利用者に優しいUI/UXによって構成されているため、全社で取り組むナレッジマネジメントにベストなツールと言えるでしょう。
まとめ
ナレッジマネジメントを導入した企業の成功事例と、よくある失敗事例をご紹介いたしました。
ナレッジマネジメントが順調に進み、ナレッジがデータとして蓄積しても、暗黙知が形式知に変換するアウトプットを適切に実施しなければなりません。形式知化のベストな方法として、eラーニングシステムでのナレッジマネジメントをおすすめします。
ナレッジマネジメントのためのeラーニングシステムの選定に迷ったら、ぜひetudesをご検討ください。
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